漢方からみる不妊・子宝・基礎体温③

②のつづきから・・・。

漢方(新臨床中医学)の視点からみると他にもいろいろと見えてきます。

例えば、「血流をよくするから」「毒出しに」「健康にいいから」「冷え対策に」『半身浴』を妊活にとり入れる方法がいろんなメディアで紹介されていますが、漢方では『半身浴』はおすすめする機会が少ないです。


理由はいろいろありますが、その内の一つは「温める」です。

「えっ!?温めた方がいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、『温めていい人』と『温めてはいけない人』がいます。『温めてはいけない人』は温めるとからだに悪い反応が出ます。そういう人は『熱または熱化体質』のタイプです。

<半身浴は38~40℃のぬるめのお風呂に20分ないし20分以上つかると良い>という方法が一般的に多く見受けられますが、熱タイプの顕著な人はぬるめのおふろであったとしても20分も湯船につかっていると疲れたりのぼせたり、めまいや気分の悪さ、動悸などの症状が現れる人もいます。

熱タイプの人に熱を加え続けると基礎体温では低温期の体温が通常よりも高くなる・高温期の体温がなかなか下がらないなどにつながったり、不正出血しやすくなる、イライラする、落ち着かなくなるなどの精神不安定などにつながる可能性も出てくるのです。

熱タイプの人は、体が疲れない程度にサッと湯船に浸かるくらいがいいと思います。


半身浴をおすすめする機会が少ないその他の理由の一つは「汗をだす」です。

漢方で『汗』は『津液(しんえき)』というからだを潤す栄養からできていると考えます。また『汗』は『気』というエネルギーを使って体外へ排出されると考えられています。ですので「汗をいっぱいかいてデトックス(毒出し)!」は、漢方では間違いで「汗をいっぱいかく=栄養とエネルギーを沢山消費する」ということになります。

からだの中の必要なものが不足している体質を『虚証(きょしょう)』(虚は不足の意。証は体質)と言います。『虚証』のタイプは汗をいっぱいかくとさらに『津液(栄養)』や『気(エネルギー)』が不足します。『栄養・エネルギー』が不足すれば卵子や子宮内膜に必要な栄養やエネルギーも少なくなるので卵子の発育がうまくいかない、子宮内膜が厚くならないなどの原因にもなります。

通常の汗をかく程度であれば問題ありませんが、半身浴では無理やりたくさんの汗をかかせることになるので『虚(不足)』が生じやすくなるのです。

虚は「気虚」「陰虚(いんきょ)」「陽気虚(ようききょ)」とに分類され、それぞれの虚のタイプによって基礎体温が変化します。


このように健康によいと思われる習慣が、漢方の視点からみると『この人にはいいが、あの人にはよくない』ということはよくあります。その他にも食べ物や飲み物なども同じことが言えますので、まずは自分に合うものかどうかを考えてからとり入れるようにしたいですね。

・・・・・つづく。

池田東洋堂薬局(漢方)

病気の原因が分からず、「治療がうまくいかない」「治療薬自体無い」というご相談をよく受けます。そんな時に『新臨床中医学』の視点で考えると改善方法がみつかることは稀ではありません。少しでも多くの方のからだの悩みや苦しみが、少しでも軽くできたらと思いホームページを開設しました。